2013/05/29 (Wed) 16:12
前提的坊ちゃんのスペック&設定説明
名前:リン・マクドール
時間軸:2軸後
基本装備:棍・バンダナ・赤月帝国軍軍服の定番3点セット+オデッサのイヤリング他汎用アクセ等
装備紋章:右/ソウルイーター、左/水、額/蒼き門
ED:1、2両方共108星ED
・坊ちゃん→オデッサ要素有り
・良くも悪くもお貴族様的思考回路の持ち主である
・加えて結構イイ性格をしている
名前:リン・マクドール
時間軸:2軸後
基本装備:棍・バンダナ・赤月帝国軍軍服の定番3点セット+オデッサのイヤリング他汎用アクセ等
装備紋章:右/ソウルイーター、左/水、額/蒼き門
ED:1、2両方共108星ED
・坊ちゃん→オデッサ要素有り
・良くも悪くもお貴族様的思考回路の持ち主である
・加えて結構イイ性格をしている
くしゅん!
覚えのある声がそうくしゃみをするのを聞いた気がする。
けれど声の主を確かめようと振り向いた瞬間、リン・マクドールはここに立っていた。
「あれ?」
リンは周囲の光景に目を瞬いた。
自分は先程まで、真昼のバナーの村で釣りの後片付けをしていた筈だ。
緩やかな流れの川の端、宿屋の近くの桟橋で、坊主という釣果に溜め息を吐きながら、さてそろそろ宿に戻るかと愛用の棍を杖代わりにして腰を上げた所だった。
それが突然、夕暮れの荒野に変わったのだ。
「……ビッキー?」
最後に聞いた声、あれは多分彼女のものだったように思う。
もしかして、通りすがりに自分を見つけて声を掛けようとしたのかもしれない。
瞬きの紋章を宿す魔法使いであるあの少女は昔解放軍に居た頃、まれにテレポートに失敗して自分を妙な場所に飛ばしてくれたりする事があった。
状況を鑑みるに、今回もその類である可能性が非常に高い。
そう結論づけたリンは、「帰ったら文句言わなきゃ」と溜め息を吐いてキョロリと周囲を見回した。
周辺一帯が土埃の舞う荒野。緑は多少あるものの、周囲はほぼ地平線。遠くに山や森がかろうじて見えるかどうかと言ったところだろうか。
「まいったな……」
記憶に無い場所だった。
自分が今何処に居るのか、皆目見当がつかない。
オマケにちょっと近くに出かける程度の感覚だったから、財布も持っていない。かろうじて愛用の棍や魚を絞める為のナイフ、それに身に着けていた幾つかの装飾品がある程度だ。
さてどうしようかと手に持った棍でトントンと肩を叩いた所で、遠くに一つ、木が生えているのかと思った黒い点の辺りで、風が起こすにしては局所的すぎる動きをしている土煙のゆらぎを見つけた。
「……馬車、かな?」
目を凝らしてどうにか判断出来るそれは、段々と近づいて来ている。
行幸だった。
ここがどの辺りか訊ね、出来れば人里まで連れて行って貰おう。
リンは一も二も無く、近づいてくるそれに手を振った。
程なくしてリンのすぐ傍までやって来た馬車は、その足を止めた。
屋根の付いたそれは簡素ながらもしっかりした作りをしていて、御者をしている男の風体からも平民である事が見て取れる。
リンの感覚的に見てではあるが、御者の男は農民よりは仕立ての良いしっかりした服を着ている事から、商人か何かだろう。だが馬車の音や止まり方からすると、荷は殆ど無さそうだ。何かの帰りだろうか。
「どうしたね?」
「すいません、ちょっと道に迷ってしまって……。ここはどの辺りでしょう?」
御者の男に、リンはペコリと頭を下げて尋ねた。
やや下手に出ているのは、自分の身分よりも年齢による序列や今の状況を鑑みた結果だ。
もうすぐ完全に日が暮れる。右も左も分からない異邦の地に何の用意もなく放り出された現状、正直言ってこの男がリンにとって唯一の情報源で生命線と言えた。
「何処って……ケセドニアの北だよ。一刻程馬車で東に進めばタタル渓谷だね」
「…………ケセドニア?」
何処だそれは。
かろうじて出掛かったその言葉を飲み込み、リンは更に尋ねる。
「この馬車はどこに向かうんです? もうすぐ夜ですし、出来れば人里まで乗せて頂けると有難いんですけれど」
「マルクトだよ。首都まで行くんだ。悪いがこっちも商売でね、乗りたいなら運賃を貰うよ。ココからだと一万だ」
どうやらこの馬車は乗合馬車だったらしい。
「マルクト……」
確か、ハルモニア語で市場の事だった筈だ。聞き覚えのない地名ばかりの中、その単語に少しばかり安堵する。
つまり、この馬車はどこかの首都の市場に行くという事か。恐らく、単語がそのまま代名詞になる程度には規模が大きいか、あるいは国内で有名なのだろう。
見知らぬ土地ではあるものの、ハルモニア語圏に多少なり引っかかる地域であると分かったのは大きかった。
ここがどこの国か知らないが、首都まで行けばトランまでの交通手段もある程度分かるだろう。最悪ハルモニアまで行けば帰還ルートはある。
だが、リンには生憎と持ち合わせが無い。
無一文だからタダで乗せろと言っても無理だろう。
この国の情勢も分からない今の時点で、自分の置かれた状況をあまり詳しく言う事は憚られた。無一文ではあるが、金目の物を持っていないわけでもなく、奴隷にする目的で捕まえようと考える可能性もある。下手に色々と尋ねて足元を見られても困る。故に、迂闊な事も聞けなかった。状況がある程度分かるまで暫くは、訊く恥より聞かぬ恥を選択しておく。
とりあえず換金出来そうな何かを持ってはいなかったかと身体を漁ったところ、胸元に付けていたエンブレムに手が触れた。結構な値段のするそれは防御を上げる効果があるのだが、状況が状況だ。仕方ない。
「それなら乗れると助かります。けど今は現金の手持ちがそれほど無くて……、コレで良いですか?」
「ふむ……」
エンブレムを手渡された御者は、夕日の光を弾くそれの重さや細工を確認し「金か」と呟く。
あっさりと鑑定したあたり、見慣れているようだ。結構羽振りの良い人間なのかもしれない。
純金で出来たそれはコボルトの村で買った掘り出し物だが、そこそこの大きさである事もあって結構な価値はあるだろう。
「何か術が掛かってるようだし、これなら余裕でお釣りが出るな。だが、生憎とこちらの手持ちの現金が釣りに少しばかり足りない」
「多少安くても構いませんよ。別に首都に着いてから渡してくれても構いませんし。あ、でも今食料とかで現物支給してくれると有難いです。……魔物に襲われて、荷物全部無くしてしまったんですよ」
こればかりは今のうちに多少ごまかして置く必要がある。そこそこ丈夫な旅装束ではあるものの外套も無く、荷物もロクに持たない状態でこんな所を一人歩いているなど、怪しんでくれと言うようなものだ。
それを抜きにしても、荷物はほぼ全部バナーの宿屋に置きっぱなしだった。早急に旅の準備を整え直さなければ、どうにもならない。
リンの言葉に男はそれは大変だなと多少哀れみの混じった目を向ける。
「安くていいってんなら、途中のエンゲーブって村で釣りと一緒に旅の道具も一揃い用意してやるよ。そこまで行けば、手持ちの手形を換金出来るんでな」
告げる男に、リンはそれで良いと返した。
正規の値段との差額は手間賃だ。今回のようにいきなりどんなトラブルがあるか知れないのだから、現金は早めに手にしておきたい。
「んじゃ、とりあえずお釣り分として五万ほど渡して置こう。道具はエンゲーブに着いてからな」
「お手数掛けます」
向こうとしても乗車賃でもあるエンブレムは先に受け取っておきたいのだろう。こちらも否やは無い。
男は金が入っているらしい小さな皮袋から何枚か硬貨を抜き出し、そうしてそのまま袋をリンに手渡して馬車の中へと促した。
リンも頷いて馬車の中に入り、座席に着く。
そうして再び馬車が進み始めた所でリンはようやく安堵の息を吐き。
「…………五万?」
そこで受け取った釣りが、八千四百ポッチで買ったエンブレムのお釣りとしては些かならず不適当な額である事に気が付いた。
覚えのある声がそうくしゃみをするのを聞いた気がする。
けれど声の主を確かめようと振り向いた瞬間、リン・マクドールはここに立っていた。
「あれ?」
リンは周囲の光景に目を瞬いた。
自分は先程まで、真昼のバナーの村で釣りの後片付けをしていた筈だ。
緩やかな流れの川の端、宿屋の近くの桟橋で、坊主という釣果に溜め息を吐きながら、さてそろそろ宿に戻るかと愛用の棍を杖代わりにして腰を上げた所だった。
それが突然、夕暮れの荒野に変わったのだ。
「……ビッキー?」
最後に聞いた声、あれは多分彼女のものだったように思う。
もしかして、通りすがりに自分を見つけて声を掛けようとしたのかもしれない。
瞬きの紋章を宿す魔法使いであるあの少女は昔解放軍に居た頃、まれにテレポートに失敗して自分を妙な場所に飛ばしてくれたりする事があった。
状況を鑑みるに、今回もその類である可能性が非常に高い。
そう結論づけたリンは、「帰ったら文句言わなきゃ」と溜め息を吐いてキョロリと周囲を見回した。
周辺一帯が土埃の舞う荒野。緑は多少あるものの、周囲はほぼ地平線。遠くに山や森がかろうじて見えるかどうかと言ったところだろうか。
「まいったな……」
記憶に無い場所だった。
自分が今何処に居るのか、皆目見当がつかない。
オマケにちょっと近くに出かける程度の感覚だったから、財布も持っていない。かろうじて愛用の棍や魚を絞める為のナイフ、それに身に着けていた幾つかの装飾品がある程度だ。
さてどうしようかと手に持った棍でトントンと肩を叩いた所で、遠くに一つ、木が生えているのかと思った黒い点の辺りで、風が起こすにしては局所的すぎる動きをしている土煙のゆらぎを見つけた。
「……馬車、かな?」
目を凝らしてどうにか判断出来るそれは、段々と近づいて来ている。
行幸だった。
ここがどの辺りか訊ね、出来れば人里まで連れて行って貰おう。
リンは一も二も無く、近づいてくるそれに手を振った。
程なくしてリンのすぐ傍までやって来た馬車は、その足を止めた。
屋根の付いたそれは簡素ながらもしっかりした作りをしていて、御者をしている男の風体からも平民である事が見て取れる。
リンの感覚的に見てではあるが、御者の男は農民よりは仕立ての良いしっかりした服を着ている事から、商人か何かだろう。だが馬車の音や止まり方からすると、荷は殆ど無さそうだ。何かの帰りだろうか。
「どうしたね?」
「すいません、ちょっと道に迷ってしまって……。ここはどの辺りでしょう?」
御者の男に、リンはペコリと頭を下げて尋ねた。
やや下手に出ているのは、自分の身分よりも年齢による序列や今の状況を鑑みた結果だ。
もうすぐ完全に日が暮れる。右も左も分からない異邦の地に何の用意もなく放り出された現状、正直言ってこの男がリンにとって唯一の情報源で生命線と言えた。
「何処って……ケセドニアの北だよ。一刻程馬車で東に進めばタタル渓谷だね」
「…………ケセドニア?」
何処だそれは。
かろうじて出掛かったその言葉を飲み込み、リンは更に尋ねる。
「この馬車はどこに向かうんです? もうすぐ夜ですし、出来れば人里まで乗せて頂けると有難いんですけれど」
「マルクトだよ。首都まで行くんだ。悪いがこっちも商売でね、乗りたいなら運賃を貰うよ。ココからだと一万だ」
どうやらこの馬車は乗合馬車だったらしい。
「マルクト……」
確か、ハルモニア語で市場の事だった筈だ。聞き覚えのない地名ばかりの中、その単語に少しばかり安堵する。
つまり、この馬車はどこかの首都の市場に行くという事か。恐らく、単語がそのまま代名詞になる程度には規模が大きいか、あるいは国内で有名なのだろう。
見知らぬ土地ではあるものの、ハルモニア語圏に多少なり引っかかる地域であると分かったのは大きかった。
ここがどこの国か知らないが、首都まで行けばトランまでの交通手段もある程度分かるだろう。最悪ハルモニアまで行けば帰還ルートはある。
だが、リンには生憎と持ち合わせが無い。
無一文だからタダで乗せろと言っても無理だろう。
この国の情勢も分からない今の時点で、自分の置かれた状況をあまり詳しく言う事は憚られた。無一文ではあるが、金目の物を持っていないわけでもなく、奴隷にする目的で捕まえようと考える可能性もある。下手に色々と尋ねて足元を見られても困る。故に、迂闊な事も聞けなかった。状況がある程度分かるまで暫くは、訊く恥より聞かぬ恥を選択しておく。
とりあえず換金出来そうな何かを持ってはいなかったかと身体を漁ったところ、胸元に付けていたエンブレムに手が触れた。結構な値段のするそれは防御を上げる効果があるのだが、状況が状況だ。仕方ない。
「それなら乗れると助かります。けど今は現金の手持ちがそれほど無くて……、コレで良いですか?」
「ふむ……」
エンブレムを手渡された御者は、夕日の光を弾くそれの重さや細工を確認し「金か」と呟く。
あっさりと鑑定したあたり、見慣れているようだ。結構羽振りの良い人間なのかもしれない。
純金で出来たそれはコボルトの村で買った掘り出し物だが、そこそこの大きさである事もあって結構な価値はあるだろう。
「何か術が掛かってるようだし、これなら余裕でお釣りが出るな。だが、生憎とこちらの手持ちの現金が釣りに少しばかり足りない」
「多少安くても構いませんよ。別に首都に着いてから渡してくれても構いませんし。あ、でも今食料とかで現物支給してくれると有難いです。……魔物に襲われて、荷物全部無くしてしまったんですよ」
こればかりは今のうちに多少ごまかして置く必要がある。そこそこ丈夫な旅装束ではあるものの外套も無く、荷物もロクに持たない状態でこんな所を一人歩いているなど、怪しんでくれと言うようなものだ。
それを抜きにしても、荷物はほぼ全部バナーの宿屋に置きっぱなしだった。早急に旅の準備を整え直さなければ、どうにもならない。
リンの言葉に男はそれは大変だなと多少哀れみの混じった目を向ける。
「安くていいってんなら、途中のエンゲーブって村で釣りと一緒に旅の道具も一揃い用意してやるよ。そこまで行けば、手持ちの手形を換金出来るんでな」
告げる男に、リンはそれで良いと返した。
正規の値段との差額は手間賃だ。今回のようにいきなりどんなトラブルがあるか知れないのだから、現金は早めに手にしておきたい。
「んじゃ、とりあえずお釣り分として五万ほど渡して置こう。道具はエンゲーブに着いてからな」
「お手数掛けます」
向こうとしても乗車賃でもあるエンブレムは先に受け取っておきたいのだろう。こちらも否やは無い。
男は金が入っているらしい小さな皮袋から何枚か硬貨を抜き出し、そうしてそのまま袋をリンに手渡して馬車の中へと促した。
リンも頷いて馬車の中に入り、座席に着く。
そうして再び馬車が進み始めた所でリンはようやく安堵の息を吐き。
「…………五万?」
そこで受け取った釣りが、八千四百ポッチで買ったエンブレムのお釣りとしては些かならず不適当な額である事に気が付いた。
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プロフィール
HN:
斎里彩子
性別:
非公開
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