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ごった煮
気が向いた時に更新する箸休め的SS放り込みBlog。 二次は腐ってたりアンチしてたりもするので注意されたし。
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2025/06/19 (Thu) 03:23
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2013/05/29 (Wed) 15:04


世界は変わっているようで変わっていないのではないか。

それを考えるのは、最後の最後。

何もかもを諦めた時だけでいい。

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******* 05:邂逅の交響曲




トロデーンはやはり呪いのイバラに覆われてしまったらしい。
その噂が流れてきたのはいつだっただろうか。
あまりに不吉な『予知』ゆえに、あまり流布される事は無かったそれが現実となり、知っている僅かな人たちから、また夢見が当たったと騒がれたのは覚えている。

その一行に会ったのは、ドニでの宣教活動中だった。

オレンジ色のバンダナを頭に巻いた青年。
トゲのついた帽子を被る、背の低い太った人相の悪い男。
胸元の大きく開いた目に楽しい服を着た、ナイスバディで赤毛のツインテールが特徴的な勝気そうな美少女。

エイト、ヤンガス、ゼシカ。
かつての仲間達だ。
ちなみにゼシカの描写だけ細かい理由は言うまでも無い。

一行を行き交う人々の合間に見つけ、一瞬ギクリとした。

『前』よりも賑わっているドニの街中で、彼らを見つけてしまったのは偶然か必然か。

キョロキョロと周囲を見回していたエイトが、自分の視線に気づく。
ククールと目が合った瞬間、エイトはポカンと少し驚いた表情で静止した。
その奇妙な様子に首を傾げ、そしてハッとする。
もしかして、彼らも自分と同じように、遡ってきているかもしれない。だとすれば当然、自分が騎士服ではなくこんな格好をしている事に驚くだろう。
そんな期待を持って歩み寄り、話しかけてみることにする。
近づく自分に気づいたのか、他の二人もこちらを向いた。

「こんにちは。旅の方ですか?」
「え……、は、はい……!」

多少挙動不審だが、初対面の相手に対する態度のように見える。
少しだけ、ガッカリする。
彼らにも記憶があったなら、この不安を少しでも分かち合えると思ったのに。
横からゼシカ達が口を挟む。

「まあそんなトコよ。貴方は修道士?」
「はい」
「勧誘と寄付はお断りでがす」
「それは残念ですね。まあ、何かあったらお気軽にどうぞ。解毒や蘇生の時にマイエラ修道院をご贔屓下されば幸いです」
「ああ……、アンタあそこの人なのね」

今にも舌打ちでもしそうな、苦虫を噛み潰したような表情になったゼシカに、首を傾げる。
「二階からイヤミのトコのヤツか……」と呟いているのが聞こえたので、恐らくはマルチェロあたりに何か言われたのだろう。

「あ、あの!」

エイトがずいっと一歩進み出る。
若干顔が紅潮しているように見えるのは気のせいだろうか。

「何でしょう?」
「男ですか? 女ですか!?」

真剣な眼差しでそんな事を訊かれた。
冗談かとも思ったが、青年の真剣な瞳がその可能性を否定する。

「……男、だけど」

思わず口調が素に戻ってしまう。

「そ……、そうですか………」

ガックリと頭を下げるエイト。

「………エイト、教会の女性なら普通シスターの格好してるでしょうが」
「声も低いし胸も無いでがすよ」
「……そうだね」

ビラビラした宣教師の服で判断がつかなかったらしい。
確かに、『前』の時よりは騎士でない分鍛えが足りないから細身かもしれないし、長い銀髪も纏めずに流しているが、青年より身長が高い時点で気づいて欲しかった。

気まずい沈黙が降りたところで、さて、どうしたものかと考える。
このまま一行を行かせてしまっては、色々とマズイだろう。
オディロ院長を守る為には、戦力は少しでも多い方が良いからだ。
彼らは恐らくドルマゲスを追っている。
しかし、初対面の自分が普通それを知るはずはない。
トロデ王が一緒に居たら、「まさかあなた方は」とか何とか言って尋ねる事もできるが、姿が見えない事から、恐らく馬車ごと町の外に居るのだろう。
『前』のようにゼシカを口説くのも手だが、生憎と修道士を選んだ為に聖堂騎士団の指輪は持っていないので、どう転ぶか分からない手は打てない。
相手側が話を振ってくるのを待つしかない。
幸い、それほど待つ必要は無かった。

「そうだ……、僕達、ある人物を追っているんです」

エイトが杖を持った道化師の格好をした男を見なかったかと尋ねてくる。

「それで、名前はドルマゲスと言うんですが……」

それだけの特徴では、こちらから話を振るには弱い。
もう少し、詳細を出して貰いたい。

「ドルマゲス……、生憎と耳にした覚えはありませんが……追っている理由をお訊きしても?」
「その男が持っている杖は、僕の主から盗んだ品なんです。そして僕の主が彼に呪いを掛けられてしまって……」
「盗品の奪還と解呪が目的なんですね」
「そういうことよ」
「解呪ならば教会でも承っておりますが……」
「生憎と、とても強力なものなんでがす」

その強力な呪いの詳細を言って欲しい。
城をイバラに包んだ、とでも言ってくれれば一発なのに。
まあ、エイト達もあまり広めるつもりは無いのだろうから仕方ないのだが。

「……そういえば思い出した!」

ゼシカが手を叩く。


「マイエラ修道院に居る『賢者』は、スゴイ力を持ってるって聞いた事があるわ!
その人なら呪いも何とか出来るかも。
貴方、あの修道院の人なんでしょ?よければ紹介して貰えないかしら」


思わぬ方向からの切り口に、ククールは石化した。


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